学長室でキャサリンが実の娘との再会を果たしている頃、彼女の父親であるカールはといえば・・・

「・・・ふぅ〜・・・」

その学長室前で未だにドアを開けるかどうか迷っていた。

一先ず制服を着替え直し、荷物をミラやミレーヌに渡し、フィリスに渡す振りをして、いよいよ娘に会おうとしたのだが後一歩と言う所で足が竦んでしまっていた。

それも仕方が無い。

何しろカール自身は娘がいると聞いてはいるが、その眼で見たことなど一度も無い。

それ所か名前すら判らない。

動転するあまり、キャサリンやフィリスに最も大切な事を聞く事すら忘れていた。

実の父親が自分の顔所か名前すら知らないと知れば、間違いなく落胆し失望するだろう。

唯一心当たりがあるとすればかつて何の気も無しにキャサリンに提案した『シャロン』の名だけ。

しかもこれが当たっているとは限らない。

かと言ってこのまま退散する訳にも行かない。

だが・・・

そんな風に思考の堂々巡りを繰り返す事数分、遂にカールは覚悟を決めた。

「会おう・・・一度も会った事も無い僕に会いに来たんだから・・・」

退路を断つ様に小さく呟くと静かにノックした。









控えめなノックの音に緊張したようにシャロンの背筋が伸びる。

「お母様・・・」

「来たみたいね」

娘の不安そうな視線にキャサリンが出迎えようとしたのをフィリスが止める。

「私が出迎えるからお祖母ちゃんはお母さんの傍にいてあげて」

良く見れば、シャロンの身体は小刻みに震え、呼吸も不規則になっていた。

一度も会った事のない父親との対面に緊張が極限にまで達しているのが誰の眼にも明らかだった。

「・・・お願いフィリス」

「うん」

一つ頷いてドアに向かうフィリス。

再びソファーに腰掛けたキャサリンにシャロンが尋ねる。

「お母様・・・お父様、私の事娘だと認めてくれるかな?・・・一度もあった事のない私を・・・」

「大丈夫よ・・・シャロン、お父さんは貴方の事も受け入れてくれるわ。何と言っても私の事を愛してくれたんだから」

そう言って娘の肩を抱く。

「大丈夫、きっと大丈夫だから・・・」

幼子をあやす様に静かに肩を叩きながらシャロンを安心させようとしていた。









ドアをノックしてすぐにカールを出迎えたのはフィリスだった。

「もう、お祖父ちゃん遅いわよ。お母さんもお祖母ちゃんも待ちくたびれているわよ」

「すいませんフィリス先生」

「さ、入ってお祖父ちゃん」

カールの手を引き学長室に入れる。

そしてソファーでキャサリンに肩を抱かれている女性と遂に対面した。

「ほら、お父さんよ」

「・・・」

キャサリンに促されて面と向かうがシャロンもカールも緊張のあまり声も出す事も出来ない。

だが、その緊張に耐え切れなくなったカールが意を決して声を掛けた。

「・・・あ、えっと・・・一度も・・・君が生まれた時から本当に一回も会った事も無いから父親って見れないかもしれないけど・・・まだ学生だし・・・その・・・初めましてって言えばいいのかな・・・シャロン」

最後の呼びかけはもはや博打だった。

間違えれば落胆されるだろうが、言わなければ失望される。

正しいかどうかもわからない賭けだった。

だが、カールの勇気は正しく報われた。

「!!」

最後の呼びかけにシャロンは眼を大きく見開き、キャサリンは当然だといわんばかりに、フィリスは安堵した様に微笑む。

「っ・・・お父様・・・お父様!!ああああああああ!!」

カールの胸に飛び込み大粒の涙を流しながらキャサリンの時よりも大声で泣きじゃくる。

「え、えっと・・・ご、ごめんもしかして・・・」

その様子にもしや名前を間違えたかと思い、震えながら尋ねる。

それに助け舟を出したのはキャサリンだった。

「大丈夫よカール。この子の名前はシャロン。この子が生まれる前から私達で決めていた名前で良いのよ」

「そ、そうなの?」

「ええ、嬉しいのよねシャロン?お父さんが貴女の事を娘だとすぐに判ってくれたって事が、お父さんが貴女の名前を判っていたって事が」

頭を撫でながら優しく尋ねる。

声も出ない様子であるが首を縦に振ってただただ泣きじゃくる。

そんなシャロンの様子にどうしようも無い愛おしさを覚えて、まだ小さい赤ん坊を抱くようにシャロンを抱きしめる。

この場合劇であれば大喝采と共に劇は終わり、幕が降りる所であるが、現実はそうも簡単に終わらなかった。

「・・・あ、あの・・・」

そこに第三者の声が響く。

それは話について行けず、更には場の尋常ではない空気の為に声をかける事すら出来なかったメルフィナだった。

「??あれ?シャロン、この子は?」

それに気付いたカールがようやく落ち着きを取り戻したシャロンに尋ねる。

「え?あ、ご、ごめんなさいお父様、フィリス、メルフィの事まだ話していないの?」

「あっ、ご、ごめんお母さんまだ話してなかった」

「全く・・・仕方ない子ね」

うかつとしか言い様のない娘の台詞に溜息を吐く。

「えっと・・・メルフィてっ言うの?」

「はい、メルフィナ・サイフォンです。初めまして」

「あ、初めまして、えっと・・・カール・」

そこでカールは本来の『ワインバーク』の姓を使おうとしたのだが、

「「「・・・」」」

キャサリン、シャロン、フィリスの言い様の無いプレッシャーに負け、

「カール・サイフォンです」

近い将来名乗る方の苗字で名乗っていた。

「初めましてキャサリン・サイフォンよ。シャロン、この子って・・・」

「もしかしてシャロンの?」

この時カールもキャサリンもメルフィナがフィリスの妹だと思っていたのだがそれに対しての答えをシャロンではなくフィリスが答えていた。

「メルフィ、驚くかもしれないけど・・・この二人が貴女の曾御祖父ちゃんと曾御祖母ちゃんよ」

そのただ事ではない答えに固まったのはメルフィナではなくカールとキャサリンだった。

「え?ふ、フィリス先生?」

「フィリス?今なんて・・・」

カールとキャサリンが呆然とした声でフィリスに問い質す。

「だからお祖父ちゃん、お祖母ちゃん、メルフィは私の娘なの。だから、お祖父ちゃん達から見たら曾孫って訳・・・って!」

フィリスの説明が終わるか終わらないかの内に、二人揃って気絶していた。

カールは無論の事、キャサリンもこの事実には耐え切れなかった様だ。

「お、お父様!!お母様!!お、お気を確かに!!」

「お、お祖父ちゃん!!お祖母ちゃん!メルフィ!!すぐにお水持って来て!」

「うん!」

それ見て娘、孫、曾孫は大慌てでカールとキャサリンの介抱を始めたのだった。









幸い、すぐに意識を取り戻した二人はすぐに事の真偽を確かめに入った。

「フィリス・・・シャロン、そのこの子は本当にフィリスの?」

「うん、私の娘よ」

「そうですお母様」

「じゃ、じゃあ・・・そのお父さんは・・・一体・・・」

フィリスが結婚したという話は一度も聞いた事の無いカールは恐る恐る尋ねる。

なんとなく嫌な予感がするがそれでも祖父として確認を取る。

「この子のお父さん?静穂のお父さんよ

「「え?」」

更なる爆弾発言・・・おまけにさらりとメルフィナ本人の前での発言に・・・に二人とも再び硬直する。

特に静穂と同じパーティであるカールの衝撃は大きかった。

「フ、フィリス?・・・い、良いの?この子の前で・・・」

「大丈夫よお祖母ちゃん、メルフィもその辺の事情は分かっているし、ライルさん・・・静穂のお父さんだけど、彼もこの子の事は認知してるし。ねっメルフィ」

「うん、ライルお父さんも顔も見せてくれるし」

母の質問に屈託の無い笑顔で答えるメルフィナ。

その表情からもメルフィナ本人がそれを気にしている素振りは微塵も感じられない。

「そ、それよりもフィリス先生・・・どうしてメルフィナを?」

「あ、それか・・・お祖母ちゃん、お祖母ちゃんなら知っていると思うけどサキュバスには定期的に発情期があるの知っているよね?」

「ええ、と言う事は・・その人と?」

「うん、その当時、男子は教師が三人、生徒だとライルさんしかいなかったの。流石に先生方にお願いする訳にはいかなかったからライルさんに無理言って発情期の時の相手をしてもらったの。静穂のお母さんとライルさんが付き合っている時にも相手をしてもらっていたの。もちろん私の事を全て話した上でお願いしての事だけど」

「良く承諾したわね」

「同じルームメイトだったのと、一緒のパーティを組んでいたから。流石にいい顔はしなかったけど」

「当然でしょ」

「で、静穂が生まれて二年後に私がメルフィを妊娠しちゃったのよ」

「大変だったわあの時は」

実際その現場を知っているジャスティンは深々と溜息を吐く。

「そうだったんですか・・・」

「ええ、さすがの瑞穂も・・・ああ静穂のお母さんの事だけど、堪忍袋の尾が切れたみたいで、刀片手にライルとフィリスを追い掛け回していたわ。私や先代の学長先生らが止めなかったら間違いなく惨殺死体が二つ転がっていたと思うわ」

その言葉だけでもいかなる修羅場だったのか良くわかる。

「ちなみにフィリス先生・・・この事、静穂は・・・」

「静穂も静穂の姉である菫も知らないわ。大体そんなの知ったら間違いなく家庭崩壊起こすわよ。二人ともお父さんっ子なんだから」

確かにショックが大きすぎるのは間違いない。

「フィリス、楽しそうに言う言葉じゃないわよそれ・・・」

やや呆れ気味にキャサリンが苦言を呈した。









そんなこんなでメルフィナの件が一段落すると、今度はシャロンがカールとキャサリンの馴れ初めを聞きたがってきた。

「シーラ母さんからも聞いてはいるけど、せっかくお父様とお母様がいるから二人の口から直接聞きたい」

と理由を話すとフィリスとメルフィナも賛成してきた。

娘や孫、更には曾孫までが聞きたがっているとなれば話さない理由は何処にも無かった。

「聞きたいのなら別に話してもいいけど」

「あまり明るい話にはならないわよ」

ただ一応の釘は刺しておく。

二人が賢者の石に導かれて出会った時はハンターアカデミーにとって、そしてハンターにとっても受難と悲劇に満ちた暗黒時代。

いい気分になる話には到底ならないだろう。

「大丈夫です。大まかの話はシーラ母さんから聞いています」

「私も大丈夫よ」

「私も聞いてみたい、曾御祖父ちゃんと曾御祖母ちゃんの事」

二つ返事でこう言われ、(だが、メルフィナの最後の台詞にやや引き攣ったが)二人は出会いから話を始める事にした。

丁寧に話したつもりだったがそれでも大分話をはしょる事になってしまった。

だがそれも当然の話。

廃墟と化したこの城での話を全て話すにはそれこそ一日二日では話し尽くせない。

それでも三人とも満足してくれたようだった。

「良かった・・・」

不意にシャロンがポツリと呟いた。

「??どうしたのシャロン」

「はい、シーラ母さんはいつも言っていたんです。私の本当のお父さんは決して私を・・・お母様を見捨てた訳じゃないと、止むに止まれない事情で離れてしまったと・・・私もそれを信じていたんですが、でもやっぱり心のどこかでは疑っていたんです。お父様は私とお母様を見捨てたんじゃないのかと。でもそんな事は無かったんですね」

「そんな事はないさ・・・僕からしてみれば見捨てたも同じだよ・・・今ここにキャサリンはいるけど、結果としてはキャサリンを見捨てて現代に戻ってきたんだから」

「カール・・・」

いくら奇跡のような再会を果たしたとは言え、カールの中であの時の結末が癒しがたい傷となって残っているのは明白だった。

そんなカールの手にキャサリンの手がそっと添えられる。

「キャサリン?」

「カール自分を責めないで。貴方はあの時最善の事を尽くしてくれた。私は充分すぎるほど幸せだから・・・でも、もしあの時の事を悔やんでいるのならこれから先で償って」

「これから?」

「ええ私もいる、シャロンもフィリスも、それにメルフィナも、私達に夫として、お父さんとして、お祖父ちゃんとして、そして曾御祖父ちゃんとして最高の記憶をいっぱい頂戴。そうすればそれで満足だから」

キャサリンの言葉にはっとする。

どれほど悔やもうと嘆こうと過去は戻らないし覆らない。

ならば変えるのは現在であるし未来だ。

幸運な事にそれが出来る時間も機会もまだまだあるのだから。

「そうだね・・・うん、キャサリンの言うとおりだ」

キャサリンの言葉にようやく笑顔を見せるカール。

「そうですお父様、これから今までの分まで家族の思い出をくれて貰えたら私もお母様も、フィリスやメルフィも充分です」

「家族か・・・」

不意にカールがシャロンの発した家族と言う言葉になんとも言い様の無い微妙な表情を浮かべる。

「??お祖父ちゃんどうしたの?」

「え?いや、家族同然の人はいるけど本物の家族なんて今までいなかったから、いまいちピンとこなかっただけです」

「そう言えばそうね。カール君のご両親はカール君が幼い頃に亡くなったとロレンツ氏から聞いた事があるわ」

「そうなの?カール」

ジャスティンの言葉を聞き、そのような話を聞いた事がなかったキャサリンが驚いたようにカールを見る。

「うん、だから僕にとって家族といえばロレンツおじさんにレイナとリィナだったんだ。今までは」

一つ息を吐く。

「でも今はキャサリンがいる。シャロン、フィリス先生、そしてメルフィ。これだけ新しい家族が増えたから少し戸惑っているのかも知れません」

「大丈夫よカール。すぐに慣れるわ」

「そうそう」

「そうです。曾御祖父ちゃん」

それぞれに励ましの言葉を贈るが最後のメルフィナの台詞にカールが眼に見えて沈む。

「えっと・・・メルフィ、気持ちは嬉しいけど、曾御祖父ちゃんと言われると少し・・・いや、かなり落ち込むんだけど・・・」

「確かに・・・カール君とメルフィナさんってほとんど同い年ですものね」

「そうなんですか?ごめんなさい曾御祖父ちゃん」

「また言ってる・・・」

「更に落ち込んじゃった・・・」

「こらメルフィ、あんまりお祖父ちゃんの事苛めちゃ駄目よ。それとお祖父ちゃんの事、私達以外の人の前で曾御祖父ちゃんて呼ばないように、良いわね」

「はいお母さん」

母親の言葉にメルフィナは素直に頷くのだった。









暫し親子四代、話に花が咲いたが、時計を見たシャロンが席を立つ。

「ごめんなさいお父様、お母様、本当でしたらもっとゆっくりしたいのですが、別の仕事が入っていますのでこれで失礼します」

「えっお母さん、午前中に終わらせたって言わなかった?」

「それは今日中に片付ける仕事、明日にも別の仕事が入っているの」

「呆れた・・・お祖父ちゃんとお祖母ちゃんに会う為にお母さん強引に余暇を作ったの?」

この魔法学園からサイフォン家までの距離はとても少し暇が出来たから顔を見せれるというものではない。

もしかしたら終わらせた仕事も半ば徹夜で終わらせた可能性がある。

「し、仕方ないでしょ一刻も早くお父様、お母様に会いたかったから」

「はいはい、じゃあ急いで支度しないと」

「そうね。メルフィ、城門に先に行っていて。すぐに行くから」

「はいお祖母ちゃん、じゃあお母さん元気でね」

「ええメルフィもお祖母ちゃんの言う事聞いて勉強も頑張るのよ」

「うん、それと曾御祖父ちゃん、曾御祖母ちゃん今日は会えて嬉しかった。少し驚いたけど」

「は、あははは・・・」

「私達も驚いたわ。メルフィ元気でね」

「うん、じゃあ失礼します」

そういってぺこりとお辞儀して学長室をメルフィナは後にした。

「素直な子ですねフィリス先生」

「ええ、生まれの境遇がああだから私も心配したの。まっすぐに育ってくれるかなって」

安堵したように言うフィリス。

彼女なりに娘の事を気に掛けているようだった。

突然現れた曽祖父と曾祖母にも最初は戸惑っていたようだったが、時間が経つにつれて打ち解けてくれた様でもあった。

「それでお父様」

「??どうしたのシャロン」

「はい・・・学園を卒業されたらお父様はどうされるのですか?」

「僕?僕としてはキャサリンと一緒に生きて行く事はもう規定事実だけど・・・それ以外はまだ未定なんだ」

キャサリンが甦る前は学園に残り、暗黒時代の事。そして何よりもキャサリンの事を記憶に残す事を決めていたカールだったが、そのキャサリンが甦った今となっては学園に残る事にそう強いこだわりは無い。

むしろ共に生きて行く事に障害が生じるなら全て捨てる覚悟も出来ていた。

「そうですか・・・では卒業したら私の家に来ませんか?もちろんお母様も一緒に」

「えっ?」

シャロンの提案に若干驚いたが、考えてみれば、確かにそれも有効な手段の一つだろう。

シャロンの血族(実際には親子)のキャサリンがシャロンに家に住むのは何の不自然も無いだろうし、カールも上手い口実を見つければサイフォン家に入る事も出来る。

そうすればシャロンと一緒にいる事も出来る。

「そうだね・・・いい提案だと思うけど時間を置いてからロレンツおじさんとも話して、それで決めたいけどそれでも良いかな?」

「そうね。いきなりサイフォン家に入るなんて言うと不審がられるのは間違いないから、卒業してからでも遅くは無いわ」

「はい、分かりました」

カールとキャサリンの案にシャロンもあっさりと頷く。

確かにカールの卒業までまだ猶予がある。

それまでの間に決めて行けば良いと判断したのだろう。

「では私もこれで失礼します。お父様、お母様、また連絡しますからお父様達も連絡下さい」

「うん、電話や手紙でするよ」

「シャロン仕事忙しいようだけど身体は労わってね」

「はい、・・・」

お辞儀をしてからシャロンも学長室を後にしていった。

その後を追うようにジャスティンとフィリスもシャロン達を見送る為に退室する。

「はぁ・・・娘のみならず曾孫か・・・」

シャロン達が出て行ったのと同時にカールは大きく溜息を吐いた。

やはり、メルフィナの存在は充分に衝撃だったようだ。

「私も驚いたわ・・・まさか曾御祖母ちゃんなんて呼ばれるなんて思わなかったわ・・・」

キャサリンも溜息を吐く。

「でも・・・良かったわ・・・あの子・・・シャロンもあの子なりに幸せな家庭を築いていたみたいだし」

「うん、それは僕も安心した。それに僕の事をお父さんって認めてくれたことにも」

「私も不安だったわ。最初はどう罵られようと受け入れようって覚悟していたから」

「僕もそうさ。一度も会っていない僕を父親なんて見てくれるかなって思ったけど・・・お父様か・・・」

憮然とした表情のカールにキャサリンがクスリと笑う。

「どう見ても似合わないものね」

「うん、それは認める。だから・・・」

「大丈夫よカール。まだ時間もあるし、貴方はもっと成長するわ。そうしたらきっとあの子がお父様と呼んでも不自然がない日がきっと来る。その時まで勿論私は傍に居るわ」

「うん・・・ありがとう、キャサリン」

そう言って二人は笑い合った。